私たちは二本脚で立って歩いて生活をしています。毎日気が付かないうちに膝関節や股関節、腰に負担をかけているのです。それにより年齢とともに膝関節や股関節、腰にトラブルが発生して痛みや可動域の制限が出現し、生活や趣味活動の妨げになる可能性があります。
今回はその中でも膝関節に注目してお話ししたいと思います。
膝関節は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(脛の骨)、膝蓋骨(膝のお皿と呼ばれる骨)で構成されます。大腿骨と脛骨の末端、膝蓋骨の関節面には関節軟骨と呼ばれる軟骨が骨をカバーするように包んでおり、大腿骨と脛骨の間には半月板と呼ばれる軟骨が存在しています。そのほかにも関節を安定させるための靱帯や膝関節の運動と安定性を向上する筋肉が関節を構成しています。
関節軟骨は膝関節にかかる体重や運動時の衝撃を緩和する緩衝材としての役割や膝関節の動きを滑らかにする様な役割があります。皆さんはテレビなどで聞いたことがあると思いますが関節軟骨は使用すればするだけ擦り減っていきます。そして軟骨は自己再生能力が乏しく回復することが難しいものなのです。年齢とともに擦り減り回復が難しい軟骨がある程度傷んでくると痛みや関節の動きを邪魔して引っ掛かるような違和感が出現するようになります。そのまま放置するとO脚などの変形を伴う変形性膝関節症につながります。
痛みが増え歩くことも困難になれば生活も大変になり、スポーツや旅行、園芸や買い物などの趣味活動も行えないことになります。そうならないためにどうすればよいのか考えていきましょう。
関節軟骨を摩耗することは避けられませんがその負担を減らして守っていくことは可能です。では、そのために有効な方法とは何が考えられるでしょうか。
➀ 体重を軽くして膝関節にかかる負担を減らしてあげるということになります。
② 膝関節を動かし支える筋力を強化して関節にかかる負担を減らすという方法です。
一つ目の体重を減らし負担を軽減する方法について注意点があります。それは運動をしないで食事を減らすなどのダイエットを行うことです。もちろん、食事内容を考えて間食を減らすなどの食事コントロールをすることも重要になりますが必要以上に食事を減らすことで栄養状態を悪化させることは筋力や体力の低下を招きます。また、運動をしないと筋力が低下してしまうことが考えられます。これにより関節を支える力が低下して体重は減ったのに関節にかかる負担は軽減しないような状況が発生する可能性があるのです。
ここで重要になるのが二つ目に挙げた運動による筋力の強化をすることにつながっていきます。膝関節を動かし支える筋肉は主に大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋です。これらの筋肉を強化し関節にかかる負担を軽減することで膝関節の痛みの軽減につなげます。強化に役立つお家でできる運動を紹介します。
<大腿四頭筋を強化する運動>
① 椅子などに腰を掛けます。その姿勢で膝関節を出来る限りまっすぐ伸ばします。伸ばした状態で10 秒間数えます。10 秒数えたらゆっくり元に戻します。これを10 回繰り返します。片脚を10 回終えたらもう片方の脚も10 回運動を行いましょう。
この運動のコツは膝関節を伸ばした時に膝蓋骨(膝の皿)のすぐ上に力を入れるイメージで行うと良いでしょう。
② 床やベッドに長座位(足を伸ばした状態で座る)または背臥位(仰向けに寝る)で膝関節の下に枕やボールを入れます。そのまま枕を膝の裏で押しつぶすように膝関節を伸ばします。押しつぶしたまま10 秒間数えます。これを10 回繰り返します。片脚ずつ行います。
この運動のコツは膝蓋骨(膝の皿)の周囲に力を入れるイメージで行うと良いでしょう。
<ハムストリングスを強化する運動>
① 立位で脚を肩幅に開きます。椅子の背もたれや壁、壁についている手すりなど安定した動かないものに手をつきます。そのまま膝関節を45°~60°程度曲げてしゃがんでいきます。膝関節を曲げた状態で3 秒ほど静止してゆっくり立ち上がります。これを10 回繰り返します。
この運動のコツはお尻を後ろに下ろしていく様に膝関節を曲げていくと良いでしょう。
② 背臥位(仰向けに寝る)で膝関節を90°曲げて膝を立てます。お尻を持ち上げて5秒静止してからゆっくりと下ろします。これを10 回繰り返します。
この運動のコツはお尻をしっかり持ち上げることとゆっくり下ろすことを意識しながら行うと良いでしょう。
<下腿三頭筋を強化する運動>
① 立位で脚を肩幅に開きます。椅子の背もたれや壁、壁についている手すりなど安定した動かないものに手をつきます。その姿勢で踵を持ち上げます。その後ゆっくりと踵を下ろします。これを10 回繰り返します。
この運動のコツはしっかりと踵を持ち上げゆっくりと下ろすことを意識して行うと良いでしょう。
⇒ まとめると、膝関節の負担軽減には運動を行いながら適度な栄養を食事でとり、
余分な間食を避けて筋肉を保ちながら体重を減らすことが大切です。
膝関節の痛みなどの治療には薬物療法やリハビリテーションなどもありますので、放置せずに医師に相談して適切な治療や運動の指導を受けることが悪化させずに生活の質を維持していくことに結びつきます。
運動に関するご質問や腰痛、膝などの関節痛にお困りの方は整形外科にご相談ください。皆様の生活をサポートいたします。
参考文献:医歯薬出版株式会社 基礎運動学 第 6 版補訂
医学書院 標準理学療法学・作業療法学 解剖学 第 4 版
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