北海道では厳冬期の12月から翌年3月ごろにかけて転倒による救急搬送件数が急増します。路面凍結が主な原因で、打撲などの軽症で済む人がいる一方、腰部骨折や頭部損傷など大きなけがを負うケースもあります。
札幌市消防局によると、昨シーズン(令和2年11月から令和3年3月)の雪道転倒による救急搬送者数は850人。内訳は70歳以上46.1%、60~69歳18.7%、50~59歳15.8%―など中高年層が約8割を占めます。
けがの程度は軽症59.4%、中等症39.6%、重症1%で、頭部外傷や手首骨折などが目立ちますが、大きくバランスを失いもんどりうって倒れることも多く、腰や背中から路面に落ちて、大腿骨近位部(股関節など脚の付け根)や腰椎、また背骨など体の重要な部分を傷めてしまうケースも少なくありません。
路面の凍結は、積もった雪が日中の気温上昇などで一度解け、その後、零度以下に下がることで起きます。交通量の多い歩道や車道は雪が踏み固められて平坦なためツルツルになりやすいです。雪道や凍結した道路で転びやすいのはもちろんですが、寒さで体が縮こまると、普段ならなんでもない場所でも転びやすくなります。
冬本番、雪道や凍った路面で転倒しないために、次のことを心掛けてください。
① 体を動かし、温めてから外出する…暖房のきいた暖かい部屋から家の外に出ると、急激な 温度差で体がぎゅっと縮こまります。筋肉が硬くなってしまうと、知らず歩幅が狭くなったり、背中が丸くなったりして、体のバランスが崩れやすくなります。寒い時期の外出は、いきなり冷たい外気に身をさらすのは避け、出かける前に家の中で数分間足踏みをするなど体を温めるといいでしょう。
② 靴底がスタッドレスタイヤのように軟らかく溝のあるものを選ぶ…底が平らで滑りやすい靴を履くのは禁物。近年は靴底にピンスパイクやガラス繊維などが入った防水性・防湿性の高い靴も登場しています。濡れない、冷えない、滑らないといった機能性の高い靴選びが大切です。
③ 足の真ん中に重心をのせて、ゆっくりと歩く…転倒は体のバランスが崩れることによって起こります。雪道や凍った路面は、やや前かがみの体勢で小さな歩幅で歩きましょう。後傾の姿勢はかかとから着地するため転倒しやすいです。靴の裏全体を垂直に降ろして均等に荷重をかける足運びを心掛けてください。体の重心を足の真ん中にのせて歩くイメージです。手でバランスを取ることも重要。凍結時はすり足も有効ですが、路面が荒れているとつまずく原因になるので、少し浮かせた状態で歩く動作も必要です。
④ なるべく手荷物を持たない…荷物を持っていると、手でバランスを取りにくくなります。特に両手に荷物を持った状態だと、転んだ時に手をついて体をかばうこともできないので非常に危険です。荷物はリュックに入れて背負うのがお勧め。万が一、仰向けに転倒した際にも、リュックがクッションの役目を果たして後頭部や背中、腰をかばってくれます。また、寒いとついポケットに手を入れたくなりますが、これもとっさの時に手で体を支えることができず危険です。手を振って元気に歩くことができるように、暖かい服装と手袋を付けて外出しましょう。
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