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我慢せず、あきらめず、早期の受診を!

 

 前号で紹介させていただきましたが、「肩こり」の原因は多岐にわたる…ということです。厄介な肩こりですが、皆さまに気を付けて頂きたいのは、その肩こりがすぐにでも治療が必要な「危険な肩こり」か、否かの判断です。


 次のような症状があるときは、整形外科できちんと診察を受けることが大切です。


●手のしびれやまひを伴う…首や肩の神経・血管が圧迫されているときの症状です。

●首や肩を動かしていないのに痛む…骨の異常や内臓の病気が疑われます。

●徐々に症状がひどくなる…進行性の病気が考えられ、放置しているとさらに悪くなる可能性が高いです。

●運動をしたときに肩が痛む…狭心症など心臓の病気が疑われます。


 整形外科の診察では、まずは整形外科的な原因なのか、内科など他科の原因の可能性が高いのかを慎重に見極めます。そのためには、肩こりがいつから始まったのか、凝りや痛みの部位や強さ、感じ方や頻度、どのような場合に一番肩こりを自覚するか、姿勢により症状がどう変化するのかなど十分な問診を行います。

 次に、頚椎や肩関節などの動き(可動域)、押さえて痛いかどうか(圧痛点の有無)、運動機能や反射(神経診察)などを診て、そのうえでレントゲンやCT、MRIの画像検査、筋肉に分布する神経の状態を検査する節電図検査など行い、肩こりの原因を突き止めていきます。


 検査で頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症などの病気が見つかった場合は、もちろんそれを治療します。しかし、ここまでお話してきたように、肩こりの原因は多岐にわたり、また原因がはっきりしないケースも少なくありません。そのため一種類の治療法で簡単に治ることもありますが、原因や患者さんの状態に合わせて、複数の治療法を組み合わせていく場合も多いです。ここでは整形外科でよく行われる治療法のいくつかを紹介します。


① 物理療法

 「牽引機器」や「温熱機器」などによる物理療法です。さまざまな医療機器がありますが、筋肉内の血行を改善し疲労物質や発痛物質を取り除く作用や、筋肉を弛緩させる作用が期待され、一般的には継続治療することによってその効果が発揮されます。


② 薬物療法

 一番多く用いられるのは「筋弛緩剤」で、文字通り筋肉を緩める作用があります。筋弛緩剤で効果が見られないときは「消炎鎮痛剤」を使うこともあります。また、抗うつ剤、精神安定剤が効果をあげることもあります。「葛根湯」など漢方薬を処方する場合もあり、体を温め、筋肉の血行をよくすることで症状をやわらげる効果が見込めます。そのほか、神経の修復を助ける「ビタミンB製剤」や「血流改善薬」なども処方されます。


③ 注射療法

 凝りや痛みなどの症状が強い場合や、即効性を期待する場合、各種の「神経ブロック(肩甲上神経ブロック、頸部神経根ブロック、星状神経節ブロックなど)」や、筋肉の凝り固まった圧痛点に施行する「トリガーポイント注射」を行います。持続効果の高い「ボトックス療法」もあります。また、超音波検査機器を用いて頸部の筋肉の間の筋膜部分に、生理食塩水などを注射し、筋膜間の滑りをよくして症状を改善する「筋膜リリース」という治療法も注目されています。


④ 装具療法

 腰痛や膝痛にはコルセットやサポーターが有効なことがあるように、首や肩の凝り・痛みにも装具が効果を発揮する場合もあります。首が動かないようカラーと呼ばれる円筒状の装具を巻くことで痛みを軽減したり、また、ランドセルを背負うように背中に装着し、肩甲骨を持ち上げ首の筋肉を緩め、背筋が伸びた良好な姿勢の維持に役立つ装具もあります。


⑤ 運動療法

 医師と理学療法士が、患者さん一人ひとりの肩の状態、肩こりの原因に合わせて、毎日の習慣として取り入れたい肩周囲に対するリラックス・ストレッチ法、筋トレなどを指導します。肩こりの解消だけでなく、徐々に筋肉が付いて、凝りにくい肩に変わっていきます。


 現代病の典型ともいえる肩こり。慢性化している方も多く「肩こりがない状態が分からない」という声もよく聞きます。なかなか凝りが取れないので、マッサージや鍼灸に通って対処している人も多いと思います。誰かに身体をケアしてもらえば、その時はラクになるかもしれませんが、問題の原因を解決しないことには、また同じ状態が繰り返されてしまいます。


 「たかが肩こり」と我慢したり、「年のせい」「どうせ治らない」あきらめたりせず、整形外科を受診し、一度、自分の首や肩がどのような状態なのか確かめてみてください。治療によって、それまで四六時中、悩みの種であった肩こりから解放されると、患者さんの生活の質は大きく向上します。「肩こりのない状態」をもう一度取り戻してほしいと願っています。


 2月のブログは、連載にしてみました。最後まで読んでいただきまして有難うございました。次回は、物理療法について少し詳しく解説したいと思います。



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