まず始めに、私たちの身体には“免疫機能”という外敵から身を守るための優れた防御システムが備わっています。
免疫機能は常に身体の中に侵入しようとしてくる病原菌やウイルス、異物に対して反応し、リンパ球やマクロファージなどが働いて、“抗体”と呼ばれる特別な物質を形成します。
この特別な物質である抗体が、外敵の作用を排除したり抑制したりしながら、年中無休で常に身体を守ろうと働いてくれています。
その外敵から身を守るための最初の砦となるのが、“粘膜免疫”というシステムです。
目や鼻、口や腸など体中の粘膜に存在している抗体物質には、IgA、IgG、IgM、IgEなどの種類があり、その中でも IgA と呼ばれる抗体物質が粘膜上で活躍している抗体群の中で主役を務めています。
この IgA 抗体の多くは気管支や腸の粘膜で作られており、唾液や鼻汁、腸管液や母親の初乳に多く存在していることが確認されています。
しかし、身体が疲れたり弱ったりしているときは、IgA 抗体数が健康時と比べてかなり減少してしまい、外敵に対する戦力が落ちてしまうため、体内に病原菌やウイルス、異物が侵入しやすい状態になっています。
したがって、健康的な日々を過ごすためには外敵の侵入を防ぐ免疫機能を維持することが大切であり、そのためには重要な戦力となる IgA 抗体の数を減らさない工夫が必要になります。
~免疫機能を維持するためのポイント~
①食事について
抗体物質の材料はタンパク質です。
抗体数を保つには、日頃からタンパク質以外にも栄養バランスの良い食事を摂る事を心掛けると良いでしょう。
1 回の食事における栄養成分の構成としては、50 %を米・パン・麺類などの炭水化物、20 %を肉・魚・卵・大豆などのタンパク質、30 %を緑黄色野菜や海藻類と適度な脂質で占められた食事がバランスの良いものとされています。
さらに、免疫機能を十分に働かせるためには、ビタミン・ミネラル・食物繊維が必要とされています。
したがって、毎回の食事では1 日分の必要なエネルギー源としての炭水化物と、身体を構成・修復するためのタンパク質をしっかりと摂りながら、日本人が不足しがちと言われているビタミンやミネラルを補うための野菜を多く摂取できるメニューを選ぶと良いでしょう。
尚、食事バランスについての詳細は、農林水産省と厚生労働省が共同で策定した「食事バランスガイド」という指標がありますので、興味のある方は上記省庁のホームページで検索してみてください。
②運動について
運動不足になると免疫機能の活動は鈍くなります。
一方で、適度な運動を継続することによって免疫機能が向上することがわかっています。
しかし、激し過ぎる運動の後は疲労が大きくなり、その疲労回復のためにエネルギーが注がれることになり、その間は一時的に免疫機能が低下してしまいます。
そこで、免疫力を維持する最適な運動量として、日常生活の中で毎日 30 ~ 60 分程度、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどで積極的に身体を動かすことが推奨されています。
上記の運動に加えて「ややきつい」程度の負荷を上げた運動を 30 分程度、週 2 ~ 3 回以上行うことで、さらに免疫機能が維持されたという研究結果も報告されています。
③睡眠について
毎日適度な睡眠を取ることにより、疲労の回復と免疫機能の維持が図られています。
睡眠時間が平均 5 時間以下の状態が続くと身体の調整機能の低下が生じ、必然的に免疫機能も弱まることで感染症にかかるリスクが上昇することに加えて、癌や糖尿病、高血圧、うつ病や認知症などといった病気も発症しやすくなるというデータがあります。
また、睡眠時間が平均 8 時間以上という長時間睡眠の生活を続けた場合にも、身体の調整機能が鈍ってしまい、様々な病気の発症や死亡のリスクが上昇するという報告もあります。
これらを考慮して、最近では平均 6 ~ 7 時間前後の睡眠が疲労回復や免疫機能を維持するために最も適した睡眠時間であると考えられています。
以上、今回は普段はあまり気にかけることが少ないですが、身体の中では常に働いている免疫機能についてお話しました。
健康な日々を過ごすためには、毎日の食事や運動、睡眠に気を付けて免疫機能を維持し、病原菌などの外敵の侵入を予防することが大切です。
改めてご自身の生活習慣を見直すことで免疫機能を維持し、健康的な日々を過ごしましょう。
<参考文献>
鈴木隆二:カラー図鑑 免疫学の基本がわかる事典
<引用サイト>
農林水産省、厚生労働省共同策定「食事バランスガイド」
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