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ふくらはぎに突然の激痛!「こむら返り」はなぜ起きる?

 


 深夜に突然、ふくらはぎの筋肉がつって激痛が襲う「こむら返り」。あまりの痛さで飛び起きたという経験がある人も多いと思います。街の薬局の店頭では必ずといっていいほど「足のつる人 ご相談ください」というポスターを目にしますが、一説には中高年男女の半数以上が日常的に夜間のこむら返りを経験しているといわれます。


 中高年ばかりではなく、ランニングや水泳などスポーツを愛好する若い世代でも、こむら返りの発作はつきものです。アスリートや普段から体を鍛えているという方でもこむら返りと無縁ではいられません。


 「こむら」は、ふくらはぎのことで、ふくらはぎの筋肉が必要以上に収縮し、「つった状態」になることを、一般的にこむら返りといい、専門的にはふくらはぎの「筋けいれん」と呼びます。筋けいれんとは、私たちがふだん自分の意志で動かしている筋肉が、なんらかの原因で突然けいれんを起こして収縮したままロックされ、痛みを伴ったまま動かせなくなってしまった状態です。


 筋けいれんはふくらはぎ以外でも起こります。手足の指や腕、足首、太もものほか、首や肩、背中、腰、おしりの筋肉もつることがあります。


 こむら返りの原因は多岐に渡りますが、現在のところ「筋肉を監視するセンサーの誤作動」と「電解質異常(ミネラルバランスのくずれ)」の2つが主な原因と考えられています。


 筋肉には過剰な負担がかかった場合、損傷を防ぐ2つのセンサーがあります。筋肉の伸びすぎを調整する「筋紡錘(きんぼうすい)」と、縮みすぎを防ぐ「腱紡錘(けんぼうすい)」です。何かのきっかけで腱紡錘が誤作動を起こすと、筋肉が縮むのを止めるしくみが働かなくなってこむら返りが起こってしまうのです。

 

 また、体内でナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウムなどの電解質(ミネラル)のバランスがくずれると、神経の情報伝達がうまくいかなくなって筋肉の収縮を調整できなくなり、こむら返りとなります。

 

 そのほか、水分不足や血流不足、冷え、筋肉疲労、加齢による筋肉量・代謝量の減少、薬の副作用、糖尿病・腎臓病などの病気といった条件がいくつか重なり、相互に関係し合って筋肉を監視するセンサーの誤作動や電解質異常が誘発され、こむら返りという症状になって現れると考えられます。


 睡眠中にこむら返りがよく起こる要因は、就寝中は誰でも筋肉の伸びすぎ・縮みすぎの防止を担うセンサーである筋紡錘・腱紡錘の働きが低下するからです。また、眠っている間には、体からは汗や呼吸によって500〜600mlの水分が失われています。夜中から朝方にかけて軽い脱水状態になっているため、血流が悪くなり、電解質のバランスがくずれて、こむら返りを起こしやすくなります。寝返りによる布団からのはみ出し、朝方の気温の低下などから足が冷えがちで、足が冷えると血流が悪くなり、これもこむら返りを起こす要因となります。


 運動中・運動後によく起こるのは、汗をたくさんかき、多くのミネラルが体外に流出してしまうからです。また、運動で筋肉の収縮をくり返すと、カルシウムが大量に消費されて筋肉疲労を招きます。筋肉の疲労は、筋紡錘・腱紡錘が誤作動を起こす一因となります。

 高齢者がこむら返りを起こしやすいのは、筋肉量の減少からくる血流の悪化や筋肉疲労の蓄積、動脈硬化、他の病気や薬の影響などの要因が複合的にからみ合い、そこへ水分不足、ミネラル不足、冷えなどが引き金になっていると考えられます。


 こむら返りがまれに起こる程度なら、特に心配はありません。水分補給や適量のミネラル摂取に注意し、疲労回復に努めれば、頻発することはほとんどないでしょう。ただし、毎日のようにこむら返りが起こる場合は、足以外の筋肉がよくつる場合などは、なんらかの病気が原因となっていることも心配されます。


 整形外科領域でいえば、腰椎(背骨の腰の部分)の脊柱管(神経の通り道)が狭まり、神経が圧迫される病気「腰部脊柱管狭窄症」や、背骨の骨をつなぐ軟骨である椎間板の内側から髄核と呼ばれるゲル状の組織が飛び出し、周辺の神経を圧迫する病気「(腰椎)椎間板ヘルニア」の症状の一つとしてこむら返りが現れるケースは決して少なくありません。


 そのほか、糖尿病や腎機能障害、肝機能障害といった代謝系の病気、狭心症や心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、脳梗塞、下肢静脈瘤といった血管系の病気、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症といった甲状腺系の病気が隠れていることもあります。頻度や痛みが強まっていくようであれば一度、医師に相談することが大切です。


 こむら返りが心配になったら何科を受診すればいいのでしょうか?


  症状が強く、痛みが長く残ったり、あるいは何度も繰り返している時は、まずはかかりつけの整形外科を受診することをお勧めします。


 次号では、対処法と治療法・予防法について解説したいと思います。

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