前号に引き続き、「こむら返り」の対処法と治療法・予防法について解説いたします。
整形外科を受診されると、症状についての問診の後、視診・触診や実際に体を動かすなどの診察を行い、症状によってはそこで薬が処方され、しばらく様子をみることもあります。
問診などでほかの病気が疑われる時は、血液検査をはじめ、レントゲン、CT、MRI、超音波など各種画像検査を行って、こむら返りの原因を特定していきます。その上で、原因や隠れている病気が整形外科の範囲内でないと考えられる場合は、一般内科や循環器内科、神経内科、脳神経外科など、どこを受診すればいいか紹介・アドバイスします。
いつ頃から症状が現れ、どれくらいの期間続いているか、つる場所、起こる頻度や時間帯、場面など、診断の手がかりになるので詳しく伝えてください。アレルギーの有無、持病、服用している薬も重要な情報です。直近の健康診断の結果表も参考になることがあります。
残念ながら、こむら返りに対しての確立された治療法はありません。
急な痛みに対する対症療法として、まず薬物療法が行われます。第一選択薬は「芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)」という漢方薬です。鎮痛・抗炎症・抗けいれん作用があり、こむら返りに素早く優れた効果を現す特効薬として知られています。健康保険も適用されます。漢方薬は「体にやさしい」というイメージを持たれる人も多いようですが、漢方薬にも副作用があります。芍薬甘草湯の副作用としては、むくみが出たり、血圧が上がったりすることがありますので、街の薬局でも購入は可能ですが、医師とよく相談して症状の回数や程度に応じて正しく使ってください。そのほか、鎮痛内服薬や消炎鎮痛薬の外用薬(貼り薬、塗り薬)、血流を改善する薬や筋肉の緊張をほぐす薬、神経の伝達をスムーズにするビタミン薬、精神安定薬などを症状によって使い分けたり、組み合わせたりします。
薬の効果があまりみられない場合は、神経周辺に麻酔薬などを注射する神経ブロック治療を行うこともあります。つる方の足の親指と人さし指の間に注射する「深腓骨(しんひこつ)神経ブロック」で、症状がずいぶんと改善するケースが多いです。腰椎の神経根や硬膜外への神経ブロックや、筋肉や筋膜が硬くなり痛みを発している部分・トリガーポイントに薬を注射することもあります。
薬物療法などと並行して、こむら返りが起こった時の対処法、こむら返り予防のための運動、生活の指導も行います。ストレッチやマッサージの方法、就寝時によく起こる場合は寝具や寝方の工夫、運動不足解消の運動や体操、ウォーキングなどのやり方、バランスのとれた食生活の指導などを行い、トータルでこむら返りの治療を進めていくことになります。
こむら返りが起こってしまった時の対処法は、痛くてもつっているふくらはぎをゆっくり伸ばしてやることが有効です。ただし反動をつけたり、痛みをこらえて一気に伸ばそうとしたりしないこと。急激に伸ばすとかえって痛みが増したり、肉離れを起こしたりすることもあります。
こむら返りが起こったほうの足を前に出して座り、片手で足のつま先をつかんでゆっくりと手前へひっぱり、ふくらはぎを伸ばします。はじめは軽くさすり、それからゆっくりと息を吐きながら伸ばしていきましょう。これを筋肉のつりが解消され、痛みがやわらぐまで続けます。つま先に手が届かなければ、つま先に長めのバスタオルをかけて両端を引っ張ったり、壁などに足の裏を押し付けたりして伸ばすのも効果があります。
一般的な予防としては、普段からミネラルのバランスを意識した食生活を心掛けることが大切です。筋肉の収縮などに必要なのはマグネシウムやカリウム、カルシウム。マグネシウムは海産物のほかに、納豆や落花生など、カリウムはバナナやリンゴ、カルシウムは煮干しや牛乳などに多く含まれているので、こうした食品を積極的に取り入れるようにしてください。
また、筋肉の疲れを残さないためにストレッチやマッサージを習慣づけてほしいです。
・ふくらはぎのストレッチ
1 両足を腰幅程度で左右に開き、壁に両手を置く
2 左ひざは曲げ、右足を後ろに大きく下げる
3 右足のかかとがなるべく床から浮かないよう気をつけ、背筋を伸ばしたまま、上体を前
に倒す
4 息を吐きながら10〜20秒程度、後ろ側のふくらはぎとひざ裏を気持ちよく伸ばす
5 右ひざは曲げ、左足を後ろに大きく下げて、左足も同様に行う
・ふくらはぎのマッサージ
1 楽な姿勢で座り、片ひざを立て、両方の手のひらをふくらはぎに当てる
2 足首の後ろ側からひざ裏の方へ向かって、やさしくさする
3 痛みのない範囲で、ふくらはぎ全体を軽くもんだり、やさしくたたいたりする
4 反対側の足も同様に行う
どちらも簡単で、あまり時間のかからないストレッチ、マッサージですが、寝る前に継続して行ったところ、就寝中のこむら返りがなくなったという患者さんがたくさんいます。ぜひ試してみてください。
一般に、年齢が高くなるほどこむら返りが起こる頻度は上りますが、毎晩のようにこむら返りが起こって眠れなかったり、1週間に1回以上のペースでこむら返りが起こり、それが長期間続いていたりする場合は、なんらかの病気が原因になっている可能性があります。また、夜中に頻繁に目が覚めれば睡眠の質が低下し、日常生活に悪影響を及ぼしかねません。我慢したり放置したりせず、早めに受診することをお勧めします。